大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和33(オ)254 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人伊藤俊郎の上告理由第一点について。

論旨は本件債務引受をもつていわゆる重畳的債務引受であるとした原審の認定は

立証責任の分配を誤まつたか債務引受の法律解釈を誤まつた違法あるものであると

いうが、原審がその認定の如き事情の下に、被上告人と訴外株式会社D(以下単に

会社という)との間の本件債務引受はいわゆる重畳的引受と見るのが相当であると

した認定には所論のような違法はない。論旨は採用することができない。

同第二点について。

論旨は、原判決には当事者の援用しない証拠を事実認定の資料に供した違法があ

ると主張する。

しかし、所論本人尋問は被上告人の申請に基いて行われたものであること記録上

明白であるから、被上告人において右尋問の結果を援用したものというべきであり、

かような場合には必ずしも特にこれを援用する旨を陳述し且つこれを弁論調書に記

載して明確にすることを要するものではない。所論は採用するに足りない。

同第三点について。

論旨は、原判決は被上告人(控訴人)に対する会社の入金関係は会社との取引と

なつてからのものにかかるというのみで、上告人(被控訴人)主張の弁済の抗弁を

排斥したのか否か不明であり、また、右の事実のみから、右入金が当然会社との取

引による債務に充当され本件引受債務には充当されないともいえないから、原判決

には右入金の充当関係につき審理不尽、理由不備の違法がある、と主張する。

原判決が所論弁済の抗弁を排斥していることは判文上明らかであるから、論旨前

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段は採用できない。しかし、原判示の上告人個人が昭和二七年九月一九日までの間

に被上告人との石炭売買取引によつて負担していた残高債務金一四八万六二九〇円

を同月二七日頃会社が重畳的に引受け上告人に代つて被上告人と取引をするに至つ

た後における会社の支払金をもつて直ちにそれが会社の取引代金の弁済に充てられ

たものであり、会社の本件引受債務の弁済に充当されたものではないとした原審の

判断について考える。

原審の確定した事実によれば、上告人は昭和二七年九月頃までDの商号をもつて

個人で石炭販売業を営み被上告人との間に石炭の送荷売買取引をしていたが多額の

債務を負うに至つたためこれを会社組織で経営することとし、その頃従前より上告

人が取締役をしていたE株式会社の商号を株式会社Dと改め同会社に一切の権利義

務を引継ぎ、その際同会社が同月一九日現在の上告人個人の取引残高債務を引き受

け同月二七日頃被上告人に右業務引継の事情を説明し、同会社と従前どおりの石炭

取引を依頼するとともに右債務引受の了解を得、その後同月三〇日より会社と被上

告人との間に従前同様に石炭売買取引が続けられた、というのであるから、旧債務

と新債務とは全然別個無関係のものでなく両者は一本の、延長された同一取引にお

いて生じたものと解すべきである(会社の仕入明細書である乙一号証には旧債務を

繰越分として処理している)。しかる以上会社との取引になつた後の支払であるか

らといつてこれを従前の上告人個人との取引上の債務である旧債務の弁済には充当

しないで会社との取引による新債務の弁済にのみ充当したと見るのはいかにも当事

者の意図に反し取引の実体を無視した嫌がある。すなわち、右原審認定の会社との

取引になつてから会社よりなされた支払であつても特段の事情のない限り、それが

新債務の弁済に充当されたものと直ちに認めることはできないものといわなければ

ならない。さすれば、この点において原判決には審理不尽ないし理由不備の違法が

あり論旨は理由がある。

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よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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